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米銀は「腐っても鯛」:藤巻健史(フジマキ・ジャパン社長)・これはたんなる技術的問題

米銀は「腐っても鯛」:藤巻健史(フジマキ・ジャパン社長) 2008年11月11日 これはたんなる技術的問題
【1】
10月15日にJPモルガン・チェースの7-9月決算が発表され、その記事が10月16日の『日経新聞』9面に「JPモルガン84%減益」というタイトルで出ている。これを見ると、たしかに米国金融界が壊滅的な打撃を受けているように感じてしまう。しかしJPモルガンは3カ月間(米国は四半期決算)の純利益の額が5億2700万ドル、すなわち約530億円だ。1年間だと単純計算で4倍して2120億円である。

一方、同じ日の『日経新聞』7面には「中央三井トラスト純利益66%減」という記事も載っている。中央三井トラストの場合は半年(日本は半年決算)で160億円の純利益だから、1年間だと単純計算で320億円である。2120億円と320億円を比べてみれば、米銀はまさに「腐っても鯛」であるように思える。

さらに、84%減と66%減という数字を使って昨年の数字を逆算すれば1兆3250億円と940億円という差があったわけである。

そもそも今回の金融不況は、これまでの金融資本主義の凋落を意味することなのだろうか。私にいわせれば、そんなことはありえない。極論をいえば、これはたんなる「会計制度」の問題である。技術的問題にすぎないのだ。

【2】
日本がかつてバブル崩壊に直面して不良債権処理の泥沼に落ちたとき、当時の会計制度は簿価会計であった。簿価会計だと100万円で買ったものが、マーケットで30万円になっても、売らないかぎり、帳簿上の値段は100万円になる。損を出したくない経営者が損切りをしなかったため、溜まった膿が表面化せず、十数年ものあいだ景気が低迷した。

このような簿価会計の不備を補うため、欧米では時価会計を徹底的に取り入れた。時価会計では企業経営が丸裸になり、金融機関はリスク管理が容易になる。逆にいえば、時価会計制度の下、リスク管理が確立していたからこそ、アメリカの金融機関は1990年代に躍進できたのだと私は自分の経験から分析している。

しかし時価会計といえども完全ではない。今回は、時価会計の大きな欠点が露呈してしまったのだ。それは流動性のまったくなくなった市場においては、合理的な将来価値とはまったく懸け離れた値段が決まってしまうということである。AIGが救済されたのも、これを防ぐ意味合いが大きい。ほかの取引がまったく行なわれない状況でAIGがもっている不良資産が「バナナの叩き売り」のごとくに売却されれば、それが唯一の市場価格となり、同種の債券をもっている金融機関はこの不合理な価格で債券を評価しなくてはならなくなる。巨額の評価損の計上という負の連鎖のスタートだ。

【3】
そもそもサブプライム(信用度の低い)ローンの証券化商品の値段は、不良債権をどの程度回収できるかによって決まるはずである。いくらサブプライムローンだといっても、普通ならどんな不況下であろうと、全額が回収できなくなることなどありえないはずだ。だが、死ぬか生きるかの瀬戸際に追いやられれば「不良債権をほとんど回収できない前提で成り立つような価格」であっても、その価格で売却して現金化せざるをえない。それを私は「バナナの叩き売り」と呼んでいる。

米国政府が公的資金で銀行の不良債権を買うことにした意義は、まさにこの叩き売りを回避するところにあるといえるだろう。入札で安い価格順に買い取るにしても、政府は「バナナの叩き売り」価格では購入しないと思うからである。

すなわち今回のサブプライムローン問題は、第1にサブプライムローン証券の価格を高くミスプライシングしてしまったこと、そして、それにかてて加えて、流動性が枯渇してしまった際の時価会計に大きな弱点があったことに起因していると思うのだ。けっして米国金融システムの根本問題ではない。

私は相変わらず、簿価会計より時価会計のほうが桁外れに優れていると思っているが、今回の経験に鑑み、マーケットが消滅してしまうようなケースで時価会計をどうするかは、真剣に考えるべきだとも思う。

また、今回の市場の混乱を「デリバティブ(金融派生商品)」のせいにする議論も散見されるが、それは飲酒運転で死亡事故が起きたことを、「自動車がダメだからだ」というようなものである。責めるべきは飲酒運転であり、自動車自体は優れた乗り物であることを忘れてはなるまい。飲酒運転の防止策を考え、そのうえで車の利便性を今後とも享受しようと考えるのが合理的な判断である。

【4】
世界の経済成長は、サブプライム危機が起こるまで、2004年からずっと5%前後で推移してきた。これはデリバティブが発展したおかげという点が大きいと考える。新興国がこれだけ成長したのも、デリバティブの発達により金融市場が大きくなり、新興国までお金が回るようになったからだ。デリバティブを否定するのは、「貧乏な国は、貧乏なままでいろ」というのに等しい議論である。

金融資本主義の発展により、実体経済に比べて金融の部分が大きくなりすぎたと批判する声もある。だが、これも誤った認識である。たしかに金融の取引のボリュームは増えた。しかし金融取引の拡大は、社会にとって弊害よりはメリットのほうが大きい。なぜならば、それだけ市場の透明度が高まり、買い占めをはじめ不正な取引が起こりにくくなるからである。市場規模が小さければ、一部の人間が買い占めたり、意図的に値上がりさせることもできよう。しかしマーケットが大きくなればなるほど、意図的にマーケットを操作しにくくなるのだ。そしてそれ以上に金融取引の拡大は、大不況、大好況と景気が大きくスイングするのを防ぐことに貢献したと思うのだ。

【5】
アメリカには、いろいろな考え方の人がいて、売り局面であっても、悲観論もあれば楽観論もある。一方に集中することがないから、下がるときも上がるときも、そうそう極端には振れにくいところがある。デリバティブが発達しているので、伝統的な投資家と違うモチベーションが生まれるのも市場の一方通行を防止する。一方、日本の場合、同じような考えの人ばかりが「右向け右」で極端に動く傾向が強いのだ。

米国株は昨年夏に史上最高値の1万4000ドルを記録した。それが10月24日現在、8852ドルである。史上最高値から37%下落したわけだ。一方の日本、1989年の12月に記録した史上最高値3万9150円の半分以下の1万8000円から8693円への下落である。52%の下落だ。サブプライムローン問題からいちばん懸け離れたところにいる日本の株が、なぜ先進国でもっとも下落するのか。サブプライムローンの震源地米国が37%下落したのなら、日本株は10%程度の下落でよかったはずではないのか? 日本ではデリバティブが十分発達しておらず、多様性がなく、金融市場がまだまだ未発展だったので下落幅が大きかったと私は思うのだ。

今回の不況にしても、米国の金融市場がこれほどまでに大きくなっていなかったら、すでに世界は大不況に突入していたのではないかとも思う。マーケットが大きければこそ、それだけ極端な大不況や大好況も起こりにくくなるものなのである。

【6】
スワップへの無知が煽った恐怖

時価会計やROE(株主資本利益率)やROA(総資産利益率)経営が、経営者から長期的視点を奪い、必然的に会社をダメにしていくという批判にも反論しておきたい。時価会計は、そもそも簿価会計による企業の粉飾を防ぐためのもので、リスク管理をしやすくするのが目的である。紙面スペースがないので今回は書かないが、時価会計だからこそ長期的視点に立った意思決定がなされるという実例を私は多く経験してきた。

ところで製造業では工場用地はあくまでも必要で、それを時価評価されて会社の業績がブレてはかなわないという話も聞く。しかし、そうであるならば工場用地は保有せずに借りればよい。

日本のバブル崩壊のときは、まず不良債権問題が出て、それが片づいたと思ったら次に持ち合い株の問題が出て、さらに保有する土地が下落して、と底無し沼的に銀行のバランスシートが劣化していった。ところが今回の金融不況では、アメリカの銀行はサブプライムという不良債権さえ処理すれば、それで終わる。なぜならアメリカでは、企業や銀行が、持ち合い株も土地ももたないからで、これこそアメリカ金融機関の強みである。

彼らが持ち合い株や土地をもたないのも、時価会計だからだ。アメリカの企業や銀行の経営者は、儲かれば大量のボーナスとストックオプションをもらえるが、一方で利益を出さなければ何ももらえない。本業で儲かっても、株や不動産が値下がりして全体がマイナスになれば何ももらえず、それが嫌だから本業と関係ない株や土地はもたないのだ。

時価会計ならばこそ、「リースにしよう」という発想が生まれる。バブルのとき、ダイエーは土地を買ったが、イトーヨーカ堂はリースで賄った。結果としてイトーヨーカ堂は生き延び、ダイエーは苦境に立つことになった。時価会計になれば、多くの企業がイトーヨーカ堂に倣う可能性は高い。

土地の所有は、不動産会社など本業に任せればいい。不動産業が本業なら、時価会計でも、リスクコントロールできる。危ないと思えば、転売して安く売るなりすればいい。一方でメーカーは、モノをつくることに専念すればいいのだ。

【7】
ところで最後にもう1点だけコメントしておきたい。

「破綻した米証券大手リーマン・ブラザーズの社債やローンなどを対象にしたクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の清算が21日、完了した。リーマン関連のCDSは想定元本が約4千億ドル(約40兆円)とされたが、金融機関などリスクの引き受け手が実際に被った損失は『業界推定で60億-80億ドル』(国際スワップ・デリバティブス協会=ISDA)という。想定元本に比べ損失が少ないのはなぜか」という記事が2008年10月23日付『日経新聞』朝刊7面に掲載されている。たしかに、この清算が終わる前、40兆円という想定元本の大きさを問題とする識者が多く、市場は恐怖に慄いた。『日経新聞』の記事ではその原因を、払い方と受け方の二重計上、そしてその連鎖と分析している。

しかし私はそれ以上に、発言してきた識者にスワップの知識がなかったことが問題だったと考える。相手方が倒産したときのスワップ取引の損害額とは想定元本額ではない。相手が倒産した場合、再度マーケットに出て行き、新たなスワップを組み直さなくてはならない。そのレートと倒産相手とのオリジナルのレートとの差のみが損失にすぎない。

識者の誤った知識に基づく分析がマーケットに恐怖感を醸成した好例だろう。

アパとの密接ぶり、次々明らかに=公用車でパーティー、戦闘機搭乗許可-田母神氏

アパとの密接ぶり、次々明らかに=公用車でパーティー、戦闘機搭乗許可-田母神氏

 政府見解と異なる意見を発表して更迭された田母神俊雄前航空幕僚長(60)=3日付で定年退職=と、懸賞論文を主催した「アパグループ」の密接ぶりが11日、次々と明らかになった。公用車でパーティー出席、戦闘機に体験搭乗。「資金提供などは一切受けたことがない」と言い切った田母神氏だが、論文は最優秀賞に選ばれ、300万円の賞金を手にする。
 田母神氏はこの日の参院外交防衛委員会で、月曜日だった6月2日に開かれたアパの元谷外志雄代表の出版パーティーに公用車で出掛けたことを認めたほか、同社主催の「日本を語るワインの会」に計3回出席、同代表が航空自衛隊の戦闘機F15に体験搭乗した際、空幕長として許可したことを明らかにした。 


偽造カードで預金引き出し 被害4億円 スキミングに変わる新手口か

偽造カードで預金引き出し 被害4億円 スキミングに変わる新手口か

【1】
 企業の会員情報を基に偽造されたとみられる全国の地方銀行、信用金庫、農協のキャッシュカードで、預金が不正に引き出される被害が相次いでいることが11日、警視庁捜査3課の調べで分かった。平成18年12月以降、少なくとも9つの金融機関で被害が確認され、被害総額は約4億1000万円。カード情報を読み取って複製する「スキミング」とは異なる新たな偽造方法とみられ、同課は背後に大規模な偽造グループが関与した窃盗事件とみて、近く関係する警察本部と合同捜査本部を設置する。

 同課によると、被害に遭ったのは北洋(札幌市)▽千葉興業(千葉市)▽京葉(同)▽八千代(東京都新宿区)▽紀陽(和歌山市)▽中国(岡山市)▽大分(大分市)-の各行と城北信用金庫(東京都荒川区)、農協。

 最も被害が大きい北洋銀では、昨年10月17~23日に186人分の口座から計約1億4100万円が引き出された。

 被害者の顧客の大半が東京都内の健康食品会社と会員契約を結んでいたことも判明。同社から流出した口座番号を基に偽造カードが作られた疑いが強い。金融機関のキャッシュカードは磁気部分に組み込まれた銀行、店、口座の各番号が一致すれば偽造カードでも利用できてしまう。金融機関ごとに磁気情報を暗号化し偽造を防いでいるが、都市銀に比べてカード解析が容易な地銀などが狙われた可能性が高い。

【2】
引き出しに必要な暗証番号は残高照会サービスを利用し探り当てたとみられる。また、宝くじの当せん金の振り込みを装い、口座番号や暗証番号を聞き出す手口も確認されている。

 引き出しには顧客の居住地とは異なる東京、大阪、名古屋など大都市圏のATM(現金自動預払機)が使われていた。特定のコンビニエンスストアのATMの利用が目立ち、銀行関係者は「24時間営業で、機械周辺が無人なので狙われたのだろう」とみる。

 コンビニの防犯ビデオを分析したところ、帽子やマスクをした同一人物とみられる男が引き出す姿が複数のビデオに映っており、警視庁で特定を急いでいる。

「言論の自由」「ネットで支持も」田母神氏、強気に持論

「言論の自由」「ネットで支持も」田母神氏、強気に持論

【1】
 先の戦争を正当化する論文を書いて更迭された田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長が11日午前、参院外交防衛委員会の参考人招致に立った。自ら希望していた答弁。自衛隊のかつての実力者は、歴史認識や自衛隊のあり方を問われ、強気に持論を披露した。 午前10時前、田母神氏は報道カメラマンのフラッシュを浴びながら、まっすぐ前を見据えたまま参議院第1委員会室に入った。今月初めに定年退職するまで30年以上着ていた制服姿ではなく、紺色のスーツで身を包んでいた。 冒頭、北沢俊美委員長(民主党)から「制服組トップが内閣総理大臣の方針に反したことを公表するという驚愕(きょうがく)の事案。昭和の時代に文民統制が機能しなかった結果、三百数十万人の尊い人命が失われたことを忘れてはならない」と指摘された。 しかし、田母神氏は、落ち着いた様子で次から次へと持論を述べた。 「(日本の植民地支配と侵略への反省や謝罪を表明して政府見解となった)村山談話と私の論文は別」と語り、「我々にも憲法19条(思想及び良心の自由)、21条(表現の自由)は……」と権利を主張しようとして、委員長から遮られる場面もあった。

【2】
 質疑が進むにつれ、言葉はなめらかになる。「私の書いたものは、いささかも間違っているとは思っていない」「自衛隊が動けなくなる。言論統制を徹底した軍にすべきではない」と述べた。 さらに、インターネット上の意識調査でも論文問題が半数以上に支持されていると言及。「国民に不安を与えたことはないと思う」と強弁し、与党の浜田昌良氏(公明党)からも「正当化するのは問題だ」とたしなめられた。 約2時間半の答弁を終えた後、報道陣にも「言論の自由があり、村山談話といえども制約することはできない」と語った。しかし、6千万円程度とみられる退職金について聞かれると、こう言った。「生活が苦しいから、ぜひ使わせて頂きたい」 「日本が侵略国家というのは濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)」「我が国は日中戦争に引きずり込まれた被害者」。

【3】
 ホテルチェーンのアパグループの懸賞論文で持論を発表した田母神氏は、航空自衛隊内での信望は厚かった。 関係者によると、今年4月、空自のイラクでの活動の一部を違憲と判断した名古屋高裁の判決に対して、「『そんなの関係ねぇ』という状況だ」と記者会見で語って物議をかもしたが、そのストレートな物言いは、時に「自衛隊の代弁者」として周囲には映っていた。 今月3日に定年退職に追い込まれるまでは、陸海空の三つの自衛隊のトップである次期統合幕僚長の有力候補。故郷は福島で、なまりを残す朴訥(ぼくとつ)とした人柄も人を引き寄せたという。 だがその実力は、組織内での「暴走」も招いていた。懸賞論文に田母神氏が投稿することを、空幕内の一部は事前に知っていたが、結果的に止めることはできなかった。

【4】
 問題が表面化した10月31日には、辞表の提出を求める浜田防衛相に自身の正当性を主張し続けた。自らの力を過信した行動ともみられ、電光石火の更迭劇は「田母神氏にとっても誤算だったはず」と防衛省幹部は解説する。 国会での答弁は通常、防衛省の内部部局(内局)の背広組が担当する。自衛隊幹部である制服組の答弁は、1959年に源田実・航空幕僚長(当時)が参院内閣委員会に出席した時までさかのぼる。田母神氏は制服を脱いでいるとはいえ、「制服組トップ」の答弁はほぼ半世紀ぶりとなる。


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