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【雇用不安最前線】疲弊する日本型雇用 働き方の見直し急務

【雇用不安最前線】疲弊する日本型雇用 働き方の見直し急務

【1】神奈川県横須賀市にある日産自動車追浜工場は、昭和36年に操業した日本初の本格的な自動車工場として知られる。昭和45年には業界初の溶接ロボットを導入。世界でも屈指の自動化の進んだ乗用車組立工場として発展してきた。だが、100年に1度の世界的な不況の影響を受け、日産は昨年10月から4月まで7カ月連続で工場の操業を一時止めた。2月の国内生産台数は前年同月に比べ約7割も減少。この月の休業日数は9・5日に上り、定休日を合わせるとほぼ半分しか稼働しなかったことになる。

【2】工場の操業停止に合わせ、日産は「雇用調整助成金(雇調金)」を政府に申請した。急激な景気の変動などで、事業を縮小する際、政府が従業員の休業手当などの一部を助成する制度だ。月単位で休業が1、2日の際は基本給の8割、3~5日目は9割、6日以上は全額を休業中も支給する仕組みだ。雇調金を活用し、差額を会社が負担する。「本音としては国からは100%助成してもらいたい」。川口均常務は生産現場の厳しい内情をこう吐露した。

【3】雇調金が頼みの綱
 大幅な受注減を受け、大手企業は堰(せき)を切ったように生産部門を支えた派遣労働者の解雇や雇い止めに踏み切り、痛烈な批判を浴びた。景気回復の糸口が見えない中で、企業が頼みの綱にしたのが雇調金だった。

【4】2、3月に国内8工場で計10日休業した半導体大手のNECエレクトロニクスは、9000人分の雇調金を申請した。新日鉱ホールディングス(HD)も3月末にかけて電子部品製造の3工場で月2~16日の操業を停止し、1~3月にかけて3工場の従業員の半数にあたる約800人の雇調金を申請し、雇用維持に役立てた。

 全国では今年3月に約4万8000事業所が雇調金の申請を行い、対象労働者数は237万人9000人に達した。前年と比べると、事業所数で626倍、対象労働者数は実に約1900倍という異常さだ。

 中国の経済対策の効果が表れ、部品需要が回復したことを受けて、新日鉱HDは4月以降の雇調金申請を見合わせたが、「依然、先行きは不透明だ」と警戒を崩さない。

 雇調金は雇用維持に大きな効果を上げた。3月に申請のあった対象労働者約278万人が5・5日休業した場合、1カ月換算で約60万人の雇用を維持した計算になる。これを失業率に換算すると、1%程度になる計算だ。

 だが、雇調金は無限ではない。雇調金を活用した雇用の維持はいずれ限界がくる。日本総合研究所の山田久主席研究員は「正社員を中心にした日本の雇用システムそのものを見直す時期にきている」と訴える。

【5】ワークシェアリングの導入で合意
 今回の不況は、日本の基幹産業である製造業に重い課題を突きつけた。雇用条件が不安定な製造業派遣の規制や、仕事を分かち合いながら雇用を維持するワークシェアリングのあり方など、働き方の見直しが喫緊の課題であることが浮き彫りになったのだ。

 今年3月、政労使が雇用問題について7年ぶりに協議し、「日本型ワークシェアリング」を導入することで合意した。これを受ける形で、政府は非正規労働者の雇用維持やワークシェアリング導入を進めた企業に対する支援を強化。雇調金の要件を緩和し、残業時間を半分以下に減らして非正規労働者の雇用を維持した企業への助成制度「残業削減雇用維持奨励金」を導入した。政府としてワークシェアリング導入への道筋を示したといえるが、内容は景気悪化に対する緊急避難的な措置だけにとどまり、抜本的な議論は進まなかった。

 製造の現場では、身分が安定している正社員に対し、非正規労働者は生産の調整弁として利用されてきた。だが、今回の不況はそうした硬直的な仕組みでは、もはや社会的に受け入れられないことを明確に示した。日本の雇用システムは大きな曲がり角に来ているといえる。

 今年の春闘では、ワークシェアリングの導入に向けてトヨタ自動車、日産ともに労使で一部協議した。結局、議論は持ち越されたが、日産では4月に入って制度化することで合意した。だが、見直すべきはワークシェアリングのあり方だけではない。「働き方」そのものをどう変えていくのかが問われている。

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